小さな菌から大きな可能性

酪酸菌(宮入菌)とは?

ミヤリサン製薬の製品に使われている酪酸菌(宮入菌)(Clostridium butyricum MIYAIRI)は、千葉医科大学(現千葉大学医学部)において宮入近治博士により人の糞便から抗腐敗性の強い新たな嫌気性の芽胞菌として1933年に発見され、1935年に報告されました。その後、各種腸管病原性細菌に対して著明な拮抗作用があることが示され、同時に臨床試験において食中毒や腸カタルなど消化器疾患に対して優れた治療効果のあることが明らかになりました。

宮入菌の電子顕微鏡写真(千葉大学医学部)

1933年 宮入菌発見
たどりついたのはおなかへのやさしさでした。

宮入近治博士は、人の腸内細菌の研究中、腸内腐敗を強く抑制する芽胞菌を発見、宮入菌と名づけました。以来、宮入菌は1940年に製造開始してから、今日確かな信頼を得る整腸剤として使用されるに至るまで受け継がれてきました。博士の健康への厳しく真摯なまなざしは、75年近い時を経た現在も、他の追随を許すことなく新たな有効性の研究が続けられています。

健康を維持する、おなかと宮入菌の大切な関係
「腸」は生きるエネルギー源

腸は100種100兆個にもおよぶ腸内細菌と協力し、食物を消化・吸収することにより、私達が生きるエネルギーを作り出しています。宮入菌は、病原性細菌の増殖抑制作用はもとより、酪酸やビタミン類、消化酵素などを産生することにより、様々な角度から腸の機能を正常化させます。

宮入菌の作用

宮入菌は生きたまま腸まで届いて、健康な腸をサポートしています。宮入菌が形成する芽胞は植物の種のようなもので、胃酸や熱、抗生物質などに対して抵抗性を持つことから、宮入菌は大腸まで届いて増殖することができます。

増殖する過程において、宮入菌は酪酸を産生したり腸内細菌叢のバランスを改善したりして様々な効果を発揮します。宮入菌が産生する酪酸をはじめとした短鎖脂肪酸は、腸管上皮細胞のエネルギー源として利用されているほか、腸内の環境を安定に維持し、炎症などから守っているといわれています。また、宮入菌は試験管内の実験において、薬剤耐性遺伝子の伝達抑制作用が確認されています。医療分野だけでなく、畜産分野の課題でもある薬剤耐性菌の問題を解決する手段の1つになることが期待されています。

宮入菌は大人から子供まで、人から動物まで幅広く健康に寄与しています。

酪酸について

短鎖脂肪酸の一種である酪酸は、短鎖脂肪酸の中で最も生理活性が高いと言われています。短鎖脂肪酸は腸管上皮細胞の主要なエネルギー源で、大腸で産生される短鎖脂肪酸の95~99%が腸管上皮細胞で使用されます。吸収された酪酸は、腸管上皮細胞の増殖促進作用、腸管の蠕動運動に対する作用、腸管粘膜増殖作用が示されています。最近の研究で、腸管で産生された酪酸が神経や血液を介して脳へと作用する腸脳相関など、腸以外の臓器に影響を及ぼす可能性も示唆されています。

プロバイオティクスから疾患特異的な
LBPs(Live Biotherapeutic Products)へ

プロバイオティクスとは、「腸内細菌のバランスを改善することにより、宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物」であり、整腸剤としての医薬品のみならず、健康増進のためのヨーグルトや乳酸菌飲料などといった食品も含む広い概念です。近年の腸内細菌叢の研究の進展により、LBPsという概念が生まれました。LBPsは、従来のプロバイオティクスとは明確に区別され、「疾患」に対して「有効性」が「科学的」に証明できる「医薬品成分」を指します。また米国FDAにおいて、LBPsは(1)生菌(細菌)を含み、(2)疾病の予防や治療に用いられる、(3)ワクチンではない成分と規定されます。ミヤリサン製薬は新たなLBPsを世界に発信するため、日夜研究を続けてまいります。

広がる可能性、高まる将来性

ゲノミクス、プロテオミクスなどのオミクスに代表される科学技術の大幅な進歩により、これまでに知られていなかった腸内細菌叢と宿主との関係が次々と解明されています。

近年、腸内細菌叢が炎症性腸疾患や大腸がんだけでなく、ある種の自己免疫疾患や肥満、自閉症などの発症にも関与している可能性が報告されており、これらの疾患や症状に対する新しいLBPsの登場が期待されます。現在では思いもよらないような病気がLBPsで予防、治療できる日が来るかもしれません。